RPA初心者向け講座⓬
新たな課題
今回の講座では、全く新しい課題にチャレンジするにあたり、変数の初期値設定などを少し変えるだけで、これまでに作成したシナリオ操作の骨組みをそのまま活用できることをご紹介し、このシナリオの汎用性の高さを実感いただきたいと思います。
さて、ゴーヤンの知り合いは、中国語検定試験3級合格を目指す講座の講師を担っており、300名分の模擬試験結果を一覧表に集約し、受講生の皆さんの理解度などを詳細に確かめたいと思っています。そこで、今回は、これまでに作成してきたゴーヤンのテレワーク報告書を一覧に集約するシナリオを活用して、この知り合いの課題に取り組みます。
中国語検定試験3級・模擬試験の解答用紙は以下のとおりです。この講座の模擬試験では、オンラインの模擬試験を実施することで、ペーパレス化を図っており、受講生はエクセルシートに準備された解答用紙に書き込むスタイルとなっているものとします。なお、シート名は「Sheet1」とします。
第8回のセル位置の情報取得【シナリオ作成(1)】で勉強したとおり、データを読み込む対象となるファイルのセル座標の確認が重要です。そこで、解答用紙の上から順番に受講生が書き込む欄のセル座標を確認すると、次の表が示す通り、受験番号「J2」、氏名「L2」、リスニング問1(1)「D6」、(2)「E6」、(3)「F6」、・・・という感じとなっています。
次に集計する一覧表については、以下の表のように、受講生ごとに1行ずつ全ての解答情報が一覧として表示されるような表を準備します。
この一覧表のブランクフォームを用いて、セル座標ファイルを以下のように作成します。
以上で、新たな課題に関する事前準備は完了です。シナリオの確認と変数一覧の設定に進みましょう!
シナリオの確認
さて、シナリオの確認ですが、今回の新たな課題については、集計対象とするファイル数が300名分とかなり多い上に、解答項目も多数ありますので、一見すると、ゴーヤンのテレワーク報告書の場合とはかなり条件が違うような気がするかもしれません。しかしながら、実行したいと考えている本質的なところに着目すると、「複数枚存在する対象ファイルに記載された情報を一覧表に集約する」ところは全く同じです。
したがって、シナリオ自体の構成は何も変更する必要はないのです。そのまま使えます。これまでに作成したシナリオ全体を念のため確認しておきましょう。
変数一覧の設定
これまでに作成した変数一覧
第10回の全シナリオの総括【シナリオ作成(4)】において説明したとおり、上記のシナリオに関する変数一覧は以下のとおりです。赤枠は、必要な初期値の設定箇所です。
新たな課題に対応した変数一覧
フォルダ・ファイルに関する変数
フォルダに関する変数「テストフォルダ」、ファイルに関する変数「セル座標ファイル」「集計表ファイル」「集計結果」について、各変数名を直す必要はありません。そのまま使えます。ただし、初期値については、それぞれ対応するフォルダやファイルについて保管されている正確な場所と名称をきちんと設定する必要があります。この項目で重要な点はこれだけです。
配列に関する変数
配列に関する変数「配列」「配列R」「配列C」については、「配列R」の初期値のみ、変更が必要です。今回の集計表のフォーマットをもう一度、ご覧ください。情報を書き込む行は、「6行目」からとなっています。つまり、「配列R」の初期値を「6」と設定します。
セル位置に関する変数
セル位置に関する変数「セルの行」「セルの列」については、「セルの行」の初期値のみ、変更が必要です。今回のセル座標ファイルをもう一度、ご覧ください。情報が書き込まれている行は、「6行目」となっています。つまり、「セルの行」の初期値を「6」と設定します。
ファイルカウンタに関する変数
「ファイル一覧(ファイル名)取得」操作で、同じファイル名称を取得せずに次々とファイル名をさせるために必要な変数が「ファイルカウンタ」です。設計上、初期値には必ず「0(ゼロ)」を設定しますので、変更はいりません。
集計表のシート名に関する変数
今回も集計表ファイルのフォーマットを作成する際に、シート名を「一覧」とするならば、特に変更はいりません。お好みで設定してください。
初期値設定の必要がない変数
変数「指定セル」、「取得情報」、「対象ファイル数」、「開くファイル」、「管理」及び「種別」の計6つの変数は初期値設定が不要です。したがって、そのまま使えます。
新たな課題に対応した変数一覧
新たな課題に対応した変数一覧は、以下のとおりです。初期値設定を変更したところは朱書きで記しています。
シナリオ操作ごとのプロパティ画面の点検
第10回の全シナリオの総括【シナリオ作成(4)】において、集計表のシート名に関する変数について説明する際に、シート名に変数「一覧」をあえて使った理由を申し上げたと思います。
つまり、プロパティ設定の際に、「値⇒一覧」としても大丈夫な訳ですが、実は、ほかの用途に転用したりするときに、変数を使わずに「値⇒〇〇」を使うと、シナリオ操作ごとに一つ一つプロパティ画面を開いて確認する作業が発生します。これは、面倒ですよ。したがって、「できるだけ変数を使う習慣をつけていただく観点から変数を用いた設定を使っています。」と説明させていただきましたが、ここでその必要性を実感いただけるものと思います。
できるだけ変数を使う習慣をつけていただくことを推奨しているのは、シナリオ作成が出来上がり、実際に起動させて動かす前に、エラーがないかどうかを確認する必要がありますが、変数を用いれば、変数一覧の確認で、ミスに気が付きやすいことによります。そして、今回のように他の用途へ転用するときにも大いに無駄な作業を減らすことができます。
さて、念のため、シナリオ操作ごとに一つ一つプロパティ画面を開いて確認する作業を実行していただくと、重大な点に気が付かれると思います。そうです。繰り返し操作の回数を設定する際に「値⇒〇〇」を使っています。実は、ここでの説明についてご理解いただきやすいように、あえて使っていたのです。すべて変数で設定すべきですね。
グループ「セル位置取得」において、「繰り返し操作(列移動)」がありますが、このプロパティ設定で、繰り返しの回数について、回数欄に「値⇒16」と設定していますので、これを改める必要があります。
中国語検定試験3級・模擬試験の解答用紙において、情報が書き込まれる箇所は、受験番号1カ所、氏名1カ所、リスニング問題20カ所、筆記試験41カ所となっていますので計63カ所です。したがって、ファイルに関する変数「セル座標ファイル」「集計表ファイル」「集計結果」について、列の移動に関する繰り返し回数は「63」です。「16」と設定されている箇所をすべて「63」に改めます。
グループ「全ファイルデータ取得」にも列の移動を行う繰り返し操作があります。「繰り返し操作(情報更新)」です。このプロパティ設定で、繰り返しの回数について、回数欄に「値⇒16」と設定していますので、これを改める必要があります。
まだあります。グループ「全ファイルデータ設定」においても列の移動を行う繰り返し操作があります。「繰り返し操作(情報設定)」です。このプロパティ設定で、繰り返しの回数について、回数欄に「値⇒16」と設定していますので、これを改める必要があります。
これらの確認作業がなければもっと簡単でしたね。「変数を作って回数設定をしておけばよかったなあ~」と思いませんか?ぜひ、変数にて設定する習慣をつけてくださいませ。
いずれにせよ、このシナリオの汎用性の高さが確認できました。類似の集計作業であれば、上述のとおり、シナリオをそのまま活用することができるだけではなく、変数一覧において少し初期値を変更するだけで使える訳です。
終わりに
RPA初心者さま向け講座は、今回で最終回とさせていただきます。第1回からご覧いただき、誠に有難うございました。
WinActor を活用し、今まで人間が手作業で行っていた業務を自動化する方法はいろいろ考えられますが、実務的に幅広く利用できる方法を考慮し、多くの皆さまが「エクセル」を使用して日々の事務を進めておられる点に着目すると、その作業の自動化により飛躍的に事務効率が上がると思われるケースが多数あると考えられることから、エクセルファイルの自動集約というテーマで説明させていただきました。
WinActor のセールスポイントとしては、プログラムなどの知識がなくても、直感的な操作を可能にして、できる限りわかりやすく設計されていることが最大のメリットとうたわれていますが、やはり、シナリオ操作ごとのプロパティ画面の設定や変数一覧を使いこなすことなどができないと、シナリオ操作を順に並べるだけでは動かすことができません。
この講座を通じて知っていただきかったことは、「実務に役立つ観点から基本的な一定の使い方や原理を理解すれば、初心者🔰の方々でも、結構、実用的に使えるようになりますよ。」ということです。さらに、「シナリオの作成や変数設定の方法を工夫すれば、初心者🔰の方々でも汎用性の高いシナリオを作ることができますよ。」ということも合わせて学んでいただきました。
最後に、改めて読者の皆さま方に心よりお礼申し上げます。
皆さま、第1回から第12回までの連載にお付き合いいただき、誠に有難うございました。システムを利用した事務の効率化は、これからますます進展していくと思います。初心者🔰の皆さま方におかれましても、この講座をすべてご覧いただいたときには、気が付けば初心者は卒業されておられると思います。神部龍章の部屋では、ほかにも多彩な講座のほか、歴史物エッセイなどにも取り組んでおりますので、ぜひ、引き続き、いろいろとご覧いただければ幸いです。