ビジネス英語トレーニング講座❺
英語に対する接し方を改めるところから始めよう!
皆さま、こんにちは。教育コンサルタントの神部龍章です。
日本では、義務教育の中学校くらいから本格的に英語を勉強しますので、「国民のほとんどが英語を話すような環境にある」と言っても過言ではないと思いますが、実際はそうではありません。「なぜ、実践的に英語を使えるようにならないのか?」という疑問が大いにあるのではないでしょうか? そうです。日本においては、そもそも英語の勉強方法が間違っているのです。リスニングについてもそれは当てはまります。
ビジネス英語 Introduction(第1章)において、一番よくない勉強方法は「英文和訳」だと申し上げました。一定の英語の文章を読んで、日本語に翻訳する訓練を延々と行う訳ですが、これがよくないのです。正しいトレーニング方法は「必ず、英文を前から理解するように訓練すること」が肝要だと申し上げました。そうです、英語の文章を見たときに後ろにいったり、前に戻ったりは絶対にしてはいけません。英文に接するときには、前から順番に単語又はフレーズで理解する訓練が必要不可欠です。
では、リスニングではどうでしょうか?同じく大きな問題があります。そもそも会話を聞いているときに、頭の中で後ろにいったり、前に戻ったりしていると聞き取れないと思います。話すときも同じです。文章を考えてから話すと、自然な流れで会話もできません。
さて、正しいトレーニング方法として「必ず、英文を前から理解するように訓練すること」については、第1章から第4章にかけて繰り返し説明させていただきましたので、今回は、「リスニングの秘訣」と題して、実践的なビジネスシーン別にリスニング力を向上させる「秘訣」について説明いたします。
リスニング力の向上については、多くの方が「テクニカルな手法による向上策」を模索しておられると思いますが、英語に関する知識や能力といった観点よりも重要な要素があります。それは、英語に対する接し方です。これを正しく認識した上で、改善を図らなければビジネスの世界で通用するリスニング力を発揮することは困難だと思います。以下、詳しく解説いたしますが、まずは、リスニング力を向上させるために、「英語に対する接し方を改めるところから始めよう!」と申し上げたいと思います。
ビジネスシーン別に考えるリスニング力を向上させる「秘訣」
➀セミナー・講演会・説明会
英語によるセミナー、講演会、説明会に参加する場合にメモ取りは必要か?
ビジネスで英語を実践的に使う場合を考えてみてください。どのようなシーンが思い浮かびますか?
まず、一番気楽なものとしては、英語によるセミナー、講演会、説明会への参加ですね。何が気楽かと言いますと、話の内容はしっかり聞く必要があることは言うまでもありませんが、一方で、セミナー、講演会、説明会の場合、オーディエンスとして聞く立場に徹底することもできます。質問などを積極的に行わない場合には、一言も発言することもなく、講師や話し手の説明内容さえ、理解できればよいので、気持ちとしては気楽と言っても過言ではないかと思います。
ここで、少し私の経験談を披露させていただくと、海外出張に出かけて、英語でのセミナーに参加したときのお話です。出張の随行員として若手職員1名がいっしょにセミナーに参加してくれました。そこで、この方から「私は何をすればよいでしょうか?」と聞かれたので、「良い経験になると思いますので、まずは、しっかりと講師のお話を聞いて楽しんでください。」と申し上げました。すると、「メモとか取らないでも大丈夫ですか?出張後に提出する報告書のことも気になります。」と言われたので、「それでは、適宜、メモを取っておいてください。可能な範囲でよいですよ。」とお答えすると「ひえー😱」となりました。
なぜ、この方が「ひえー😱」となったのか、想像してみてください。答えは簡単です。「メモを取る」という行為が、この方としては「一言一句メモを取る」とか「議事録を作る」というイメージがあったからです。なぜ、そのように感じたと思いますか?原因はこれまで馴染んできた学校の勉強方法です。「英文和訳」の授業を思い出してください。出て来る英文を一言一句見逃さずに日本語に訳しますよね。そして、教室では、先生に指名されて「一言一句、寸分たがわず音読しなさい」と言われたと思います。そのため、「一言一句も逃さない」という印象が付いて回るからです。
しかしながら、日本語でのセミナー、講演会、説明会に参加した場合を考えてみてください。そこで「メモを取っておいてください」と言われて、一言一句書く必要があると思いますか?思わないでしょう?まあ、あなたがマスコミでお勤めの記者さんだったり、あるいは、あなたの職場にいらっしゃるかもしれない趣味の悪い上司さんなどが「一言一句メモを取れ!」とか「あとで議事録を作れ!」とかおっしゃらない限り、そんなことはしないと思います。当然、英語だってそんなことをする必要はありません。
パワーポイントを使ったプレゼン資料映像に基づく傾向と対策
最近の講師の方々は、パワーポイントを使ったプレゼン資料映像を大スクリーンに映しながら説明する形式が主流となっています。特に、海外では、当然、必要不可欠なものとして準備されています。ちなみに、中華圏に出張に行った際に、講演者がまるで講談師のように画像や配布資料なしで延々と語るというものがありましたが、こうしたケースはまれです。
パワーポイントを使ったプレゼン資料を大別すると2種類に分けられます。「字が多いもの」と「写真や絵が多いもの」のどちらかです。字が多い資料は読むのが大変だと感じるかもしれませんが、英語のセミナーなどの場合、大変助かりますよ。なぜならば、講師が何を話したいのか、あるいは何が重要だと思っているのか、といったことが資料に書いてあるからです。山のように字が書いてある資料や講師がまるで資料を読みながら進めるような説明の場合、楽勝ですね。もはやメモ取りも不要です。報告書を書くときにも、資料から抜き出してまとめればよいので、大変便利で助かります。
これは私の経験上の話に過ぎませんが、写真や絵が多いものを好んで使う方は、お話が平易で面白かったり、話し方が上手な方が多いように思います。その場合、結構、あとで印象にも残りますので、実は、こちらの場合もいちいちメモを取らなくても、あとからいくらでも報告書は書けるのです。
したがって、英語によるセミナー、講演会、説明会に参加する場合、結局は「良い経験になると思いますので、まずは、しっかりと講師のお話を聞いて楽しんでください。」ということに尽きる訳です。上述したとおり、字が多いプレゼン資料を使う方の場合は、報告書を書くときにも、その資料から抜き出してまとめればよいのでメモ取りは不要です。また、写真や絵が多いプレゼン資料を使う方の場合は、お話が平易で面白かったり、話し方が上手な方が多いように思うので、結局、この場合、あとで印象にも残るため、メモ取りは不要と言うことです。メモ取りなどを行っていると、集中力が継続できず、結局、リスニング力の低下を招きます。そんなことをする暇があるのならば、しっかりと講師のお話を聞いて英語を楽しむことが重要です。
英語によるセミナー、講演会、説明会に参加する場面においてリスニング力を向上させる「秘訣」
英語によるセミナー、講演会、説明会に参加する場合において、リスニング力を向上させるための「秘訣」を申し上げると、以下のとおりです。
- 英語によるセミナー、講演会、説明会に参加する場合、良い経験になると考えて、しっかりと講師のお話を聞いて楽しむこと
- 講師の方が「字が多い」プレゼン資料を使う場合、講師が「何を話したいのか」、あるいは「何が重要だと思っているのか」といったことが資料に書いてあること
- 「字が多い」パワーポイントの資料があれば、あとで報告書を書くときにも、資料から抜き出してまとめればよいこと
- 講師の方が「写真や絵が多い」プレゼン資料を使う場合、お話が平易で面白かったり、話し方が上手な方が多いので、あとで印象に残るように、しっかりと講師のお話を聞いて楽しむこと
- メモ取りなどを行っていると、集中力が継続できず、結局、リスニング力の低下を招くこと
これは教育コンサルタントしての私の持論ですが「楽しくないと身に付かない」ということが基本だと考えています。英語によるセミナー、講演会、説明会に参加する際には、メモ取りなどつまらないことを気にせず、「参加できてラッキー」と思ってお話に集中することがリスニング力の上達に向けた「秘訣」です。
➁多人数が参加する国際会議
多人数が参加する国際会議に参加する際の心構え
ビジネスで英語を実践的に使う場合について、次に挙げられるのは、多人数が参加する国際会議ではないでしょうか。
最初に少し余談ですが、仕事で国連などが主催する国際会議に出席するために、海外出張に出かけたときのお話です。私たち日本人は、時間厳守の国で生まれ育ってきたので、当然、国際会議への参加についても、集合時間に決して遅れないように会議開始前の早くから現地に到着しますよね?ところが、多くの場合、集合時間というのは単なる目安の時間であって、必ず時間厳守という訳でもないのです。実際、集合時間の前後に三々五々、参加者が集まってくるという感じです。
さらに、もっと驚くことは、昼食時間とか、会議途中でのコーヒータイムなどは、予めスケジュールが告げられますが、司会・進行の担当者が告げるスケージュールも単なる目安に過ぎないので、最初に告げられた時間どおりに始まることはなかったですね。
つまり、そういうところから、学ぶことが多くあるのです。一部のアジアの国々を除いた世界の常識としては、「せっかく国際会議に参加しているので、その場を大いに楽しむ」ということが鉄則です。「時間通りに」とか、「本日発言する内容は〇〇だ!」とか考えて参加すると、英語が得意ではない方は、その時点で気後れしてしまい、良いパフォーマンスも発揮できないものです。まずは、そこを改めるのが基本です。
「自分から発言の機会を虎視眈々と覗わないと損だ」と思う習慣をつける
さて、国際会議の場合、発言する機会も多々ある訳ですが、そもそも手ぶらで参加することはなく、事前に発言することは準備しておくことが多いので、結局、発言や発表の良し悪しは準備次第ということです。しかしながら、自分のプレゼンテーションが回ってくる時間が決まっている場合、自分の順番が終わるまで落ち着かないといったことも多いのではないでしょうか。友人の結構披露宴に招待されてスピーチなどをお願いされていると、緊張でお食事の味がよくわからなかったといった経験などもあるかもしれません。
ただし、国際会議においては、自分が発表するだけではなく、他人の発表内容をよく聞くということが求められます。自分の順番が終わるまで落ち着かないといったことも多いかもしれませんが、やはり、自分の発表の良し悪しは、結局のところ「準備次第」ということなので、自分のことは気にかけずに「まずは、しっかりと他者の発言や発表をよく聞いて楽しむこと」が重要です。
英語によるセミナー、講演会、説明会に参加する場合と多人数が参加する国際会議に参加する場合を比較すると大きく異なる点は、国際会議の場においては、自分が発言したり、発表したりすることが求められるというところです。場合によっては、司会進行者などから突然指名されて発言を求められることなどもあります。
しかしながら、物事は考えようだと思います。例えば、「多人数が参加する国際会議において、私自身が一人でほとんどの時間を使うことは可能か?」という問答を考えてみてください。答えは簡単です。「不可能」です。つまり、「自分から話したいと強く思っている人々がたくさん集まっている中で、自分の出番はわずかに限られている」と考えるほうが現実的です。そして、「せっかく国際会議に参加しているので、その場を大いに楽しまなければ損だ」と感じればOKです。さらに、「自分から発言の機会を虎視眈々と覗わないと損だ」と感じることができればラッキーです。なぜならば、割り込むタイミングを計るには、ほかの人の発言や発表を注意深く聞いていないとできないからです。
要するに、リスニング力が向上するか、しないかについても、気持ちの持ち方次第で決まります。まずは、「せっかく国際会議に参加しているので、その場を大いに楽しまなければ損だ」と感じることです。そして、余力があれば、「自分から発言の機会を虎視眈々と覗わないと損だ」と思う習慣をつけると会議出席が苦ではなくなります。そもそも、メモ取りなどを行っていると、自分から発言の機会を虎視眈々と覗うことなどは到底できませんし、はっきり申し上げて逆効果です。受身の姿勢で参加すると、リスニング力が著しく低下しますが、自分から発言の機会を虎視眈々と覗っていると自然と話が耳に入ってきて理解度が高まっていることに気づくと思います。人間と言うのはそのような動物だと思います。
多人数が参加する国際会議の場面においてリスニング力を向上させる「秘訣」
多人数が参加する国際会議において、リスニング力を向上させるための「秘訣」を申し上げると、以下のとおりです。
- 会議で発言や発表が必要なときには、当日、自分の順番が終わるまで落ち着かないといったことを避けるために、納得できるまで徹底して事前準備を行うこと
- 会議に参加した当日は、「せっかく国際会議に参加しているので、その場を大いに楽しまなければ損だ」と感じること
- 余力があれば、「自分から発言の機会を虎視眈々と覗わないと損だ」と思う習慣をつけること
- 自分から発言の機会を虎視眈々と覗っていると自然と話が耳に入ってきて理解度が高まっていることに気づくこと
- メモ取りはリスニング力が著しく低下すること
一つ笑い話ですが、日本国内で仕事の会議に出席を求められ、参加してあれこれ発言をしたところ、会議終了後に「なんで意見をたくさん述べるのか?」と聞かれたことがあります。日本では、会議というのは意見をあれこれ発表してディスカッションする場ではなくて、説明を周知徹底して、シャンシャンと終わることを目指している場合が多いからです。その際、私から「意見を言ってはいけないのであれば、忙しいので、いちいち、そのような会議と称するものに出席を求めないでほしい。あとで資料を読めばよいのでしょう?」と申し上げたら、「ひえー😱」と言われました。ははは
皆さま、リスニングの秘訣はいかがでしたでしょうか。大いに参考にしていただければ、皆さまがビジネスの世界において成功する日も近いと思います。