ビジネス英語トレーニング講座❼
対面式の会議・意見交換
筆者の失敗談
ビジネスで英語を実践的に使う場合として、最後に説明する場面は、対面式の会議や意見交換です。
リスニングの秘訣(第5章)にて説明したとおり、➀セミナー・講演会・説明会に参加する場合、➁多人数が参加する国際会議に出席する場合においては、多人数の中にいるという環境にありますので、なんとなく気楽な訳ですが、対面式の場合は大きく異なります。相手は、目の前にいます。対面する方々が親しい人たちであれば、楽しい時間をエンジョイすることもできますが、ビジネスの場合、初対面の方々とか、交渉相手の方々など、最初から緊張する場面も多々あるかと思います。
私の失敗談を先に申し上げます。海外に赴任したとき、事前に英語の勉強はしていたので、ある程度、英会話はできるレベルにありましたが、頭の中で話す内容を日本語で考えてから、これらを英語に変換して言葉として発するということをまだ行っていました。しかし、これは実践ではまったく使えないのです。
問題点1:リスニングに集中できない
一つは、頭の中で話す内容を日本語で考えてから、これらを英語に変換して言葉として発するという作業をせっせと行っているので、当然ですが、リスニングには集中できず、相手の話を流して聞いているというような状況になることです。リスニングに集中できないのは致命的です。
このやり方はだめだと感じたので、すぐにやめました。まずは、相手の話をよく聞くところから始めました。国籍が違っても人間は感じ方が同じです。聞き手が半ばうわの空で聞いているときと、自分の話を集中して聞いてくれるときを想像してみてください。どちらが感じがよいですか?自分の話を集中して聞いてくれるときですよね。つまり、自分の意見も言わなければ・・・と頭の中で和文英訳などをしているときよりも、しっかりと話に集中しているときのほうが、相手の好感度が高くなるのです。
つまり、リスニングに集中すると、当然リスニング力が向上するだけではなく、相手の好感度が高くなるというメリットが同時に付いてきます。お得です。
問題点2:話す英語が途切れがち
二つ目の問題は、頭の中で話す内容を日本語で考えてから、これらを英語に変換して言葉として発するという作業では、うまく英語にならないということです。頭の中で日本語を英語に直してから話そうとすると、どうしても話が途切れてしまいがちになります。なぜならば、長い文章を即座に英訳するというのは困難な作業であるからです。英作文を行うときに、問題文の日本語文章が長ければ長いほど、難しく感じますよね。
対面式の場合、何も話さないでもOKという訳ではありません。では、どのように話すとよいのかと言えば、「英語」を話すので、「英語的に考えればよい」のです。「英語的に考える?」とはどのようなことかと言えば、これまで第1章から第4章までの内容を振り返ってください。そうです。「フレーズごとに区切りながら、前から順番に理解する」ということでしたね。これを応用すればよいのです。
「フレーズごとに区切りながら、前から順番に理解する」ということは、英語を話すときに役立つだけではなく、リスニング力の向上にもつながります。なぜならば、「フレーズごとに区切りながら、前から順番に理解する」という習慣を身に着けると、リスニングの時にも自然と「フレーズごとに区切りながら、前から順番に理解する」ことができるようになります。お得です。
日本語と英語とでは言語の構造が違う
英語という言語は、前から順番にフレーズごとに区切りながら、順番に理解できることが基本構造となっています。私たちはそのことに慣れていないだけです。外国人の方々からよく聞く話としては、「日本語は最後まで話をしっかり聞かないとYesかNoかもわからない」ということがあります。
例えば、「明日、私はたいへん忙しいので、皆さんとピクニックに行くかどうか、迷っているのですが、行けば楽しそうだし、でも、忙しいし、・・・。決めました!私は明日ピクニックに行きま(す or せん)。」のように、外国人にとっては極めて分かりにくい訳です。最後の(す or せん)を聞き逃すと、結局どちらなのかがわからないような構造になっています。
英語で言えば「I'm very busy tomorrow, so I'm not sure if I should go on a picnic, but it seems like it would be fun to go with you, but I'm busy, so… I've decided! I (will or won't) go on a picnic tomorrow.」となります。最初の迷っているところの説明は同じようなものですが、重要なところは、「 I (will or won't) go on a picnic tomorrow.」のように、主語の次に自分の意思表示を示す単語が先に出て来る訳です。つまり、「I will・・・」や「I won't・・・」のように意思表示を主語の次に言わないといけないところが大きく異なります。
三つ目の問題は、頭の中で話す内容を日本語で考えてから、これらを英語に変換して言葉として発するという作業をせっせと行うことは、結局、日本語的発想の内容を英訳して相手に伝達しようとしている訳ですが、それでは、何が言いたいのか相手はよくわからないということです。日本語と英語とでは、言語の構造が違うので、意思表示のやり方が違うことを理解すべきです。つまり、「I will・・・」や「I won't・・・」のように意思表示を主語の次に言わないといけないので、「Yes」か「No」かをはっきりさせた上で話すことが求められているのです。
日本語と英語とでは、言語の構造が違うので、意思表示のやり方が違うことを理解すると、リスニング力も向上します。最初に意思表示が行われて、フレーズごとに周辺の説明が加わってくることを知った上で話を聞く場合と漠然と聞く場合を比べてみてください。言語の構造を理解しているほうが聞くレベルが高いと容易に想像できます。
「英語脳を作る」とよく言われますが、結局は、言語の構造の違いを理解した上で、英語に接するときには、「フレーズごとに区切りながら、前から順番に理解する」ことが基本となります。
英語圏の社会では「ディベート」の訓練が前提
英語のネイティブスピーカーさん達とビジネス交渉を英語で行うと、圧倒的に不利な立場にあることを痛感します。しかし、交渉事はたくさん話した方が勝ちではないのです。したがって、相手の話をよく聞くことをお薦めします。
英語圏の社会では小さい時から「ディベート」の訓練が行われます。日本では行われないので、馴染みがない方も多いと思いますが、あるテーマに関して、賛成する側のチームと反対する側のチームを作り、討論を行います。残りの人は、オーディエンスとなってどちらの主張がよかったかを最後に判定するというやり方です。
雄弁な方が勝つと思うかもしれませんが、勝ち負けは、必ずしも雄弁さではなくて、オーディエンスが「なるほど」と共感できる意見・主張が多くできたかどうかに依存します。彼らは、幼い時からこうした訓練を受けているので、討論を得意とする方々は多い訳ですが、一方で、オーディエンスとしての経験もたくさん積んできているので、要するに「なるほど」と自分が納得できる話が聞けると相手を称賛する傾向にもあります。
したがって、交渉を成功に導くポイントとしては、相手の話をよく聞いた上で、それを否定せずに、さらに、相手が何を述べるのかを聞くことにあります。それを繰り返すと、次第に、相手が納得できる観点が見えて来るので、そこをうまく説明できると「大成功」となります。いずれにせよ、結局は、相手の話をよく聞くことが重要なので、集中力を高め、リスニングに取り組むことが必要不可欠です。
漠然と話を聞いているとほとんど耳に入ってきませんが、目的を持って聞くと全然違います。リスニング力を向上させるには、集中力を高め、目的を持ってリスニングに取り組み、相手の話をよく聞いた上で、それを否定せずに、さらに、相手が何を述べるのかを聞くことにあります。
日本では協調性のある行動をとることばかりに力を入れ、「ディベート」という訓練を学校教育で一切実施していませんので、そもそも交渉を苦手とする人が多いのはやむを得ないことかもしれません。対面交渉が必要な職場では、ディベートの訓練が効果的です。一度試しに実施してみるとよいと思います。もちろん最初は日本語で実施すればよいのです。やり方がわからない場合は是非一度ご相談くださいませ。
交渉成功の秘訣
対面式の会議・意見交換の場面における「秘訣」
対面式の会議・意見交換の場面における「秘訣」を申し上げると、以下のとおりです。
頭の中で話す内容を日本語で考えてから英語を話す習慣をやめる
頭の中で話す内容を日本語で考えてから、これらを英語に変換して言葉として発するという作業をせっせと行い、相手の話を流して聞いているというような状況を作るのは、対面式の会議・意見交換の場では最悪の行為です。すぐにやめましょう。
まずは、相手の話をよく聞くところから始めましょう。国籍が違っても人間は感じ方が同じです。聞き手が半ばうわの空で聞いていると受け止められると当然、交渉はうまく進みません。しっかりと相手の話に集中して、相手の好感度を高めましょう。
「フレーズごとに区切りながら、前から順番に理解する」という習慣を身につける
長い文章を即座に英訳するという作業は容易ではなく、頭の中で日本語を英語に直してから話そうとすると、どうしても話が途切れてしまいがちになります。これは、対面交渉の席上、避けるべき行為です。
「英語」を話すときには「英語的に考えればよい」のです。そうです。「フレーズごとに区切りながら、前から順番に理解する」ということでしたね。これは、英語を話すときに役立つだけではなく、リスニング力の向上にもつながります。
日本語と英語とでは意思表示のやり方が違うことを理解する
日本語と英語とでは、言語の構造が違うので、意思表示のやり方が違うことを理解すると、リスニング力も向上します。最初に意思表示が行われて、フレーズごとに周辺の説明が加わってくることを知った上で話を聞く場合と漠然と聞く場合を比べてみてください。言語の構造を理解しているほうが聞くレベルが高いと容易に想像できます。
英語圏の社会では「ディベート」の訓練が行われていることを前提に対応する
英語圏の社会では小さい時から「ディベート」の訓練が行われており、勝ち負けは、必ずしも雄弁さではなくて、オーディエンスが「なるほど」と共感できる意見・主張が多くできたかどうかに依存します。
彼らは、幼い時からこうした訓練を受けているので、討論を得意とする方々は多い訳ですが、一方で、オーディエンスとしての経験もたくさん積んできているので、要するに「なるほど」と自分が納得できる話が聞けると相手を称賛する傾向にあります。
したがって、交渉を成功に導くポイントとしては、相手の話をよく聞いた上で、それを否定せずに、さらに、相手が何を述べるのかを聞くことにあります。それを繰り返すと、次第に、相手が納得できる観点が見えて来るので、そこをうまく説明できると「大成功」となります。
ディベート訓練を通じた人材育成のお薦め
対面交渉における成功の秘訣は、上述のとおりですが、しかしながら、正直に申し上げると、「秘訣」を学んでも実は簡単には成功できないと思います。英語圏の人々は、小さな時から「ディベート」の訓練を受けている一方で、日本人にはそんな経験を持つ人は限られています。
しかし、別に子供のときから訓練していなくても、社会人になってから訓練しても人材育成は大いに可能です。そもそも、学校教育で長い期間をかけて英語を学びますが、社会人になって、即戦力でビジネス英語を駆使できる人材はほとんどいません。結局は、英語自体も社会人になってから身につけるケースが多いので、ディベートも職場で始めても決して遅くはありません。
対面交渉が必要な職場では、ディベートの訓練が効果的です。一度試しに実施してみるとよいと思います。もちろん最初は日本語で実施すればよいのです。やり方がわからない場合は是非一度ご相談くださいませ。
皆さま、対面交渉成功の秘訣はいかがでしたでしょうか。交渉に成功できる人材を養成することが肝心です。皆さまの職場でもぜひ一度「ディベート」を試しに実施してみてください。英語圏の方々の考え方が実感できると思います。