ビジネス英語トレーニング講座❻
ビジネスの相手と親しくなるためには話題が必要!
皆さま、こんにちは。教育コンサルタントの神部龍章です。
ビジネスで初対面の方々と会うときには緊張すると思います。しかし、外国人の皆さんは、たいていは大変フレンドリーで、まるで昔から知っている人のように接してくる場合が多いのです。そして、自分の興味があることなどを楽しそうに話しかけてくると思います。この場面で、日本人の皆さんにありがちなことは、外国人の皆さんが語り手、日本人の皆さんが聞き手になることが多いことです。
相手の話をよく聞くことは大切なので、聞き手に徹するのも悪くはないですが、先方の立場になって考えてみてください。おそらく、あとになって考えると、聞き手をしてくれた方々の印象はあまり残らないと思います。そうです。相手の話をよく聞くことは大切ですが、聞き手に徹していると、印象に残らないのです。それは損ですよ。
「では何を話せばよいか?」となりますが、相手が雑談で盛り上がっているときに、さすがに仕事の交渉事を切り出すのはやめたほうがよいと思います。逆効果です。特に、ランチやディナーの席上で仕事の固い話などを持ち出すと敬遠されるので、相手から持ち出してきたらOKでしょうが、こちらから切り出すのはお勧めできません。そうすると、ますます「では何を話せばよいか?」となりますが、そのときに大切なことが「面白そうな話題」を持っていることと、話を切り出すタイミングです。
話を切り出すタイミングについては、「リスニングの秘訣(第5章)」で、多人数が参加する国際会議の場面においてリスニング力を向上させる「秘訣」として、「自分から発言の機会を虎視眈々と覗わないと損だ」と思う習慣をつけることなどのお話をいたしましたので、そちらを参照していただき、今回は、「面白そうな話題」を持っていることについて説明させていただきます。
「面白そうな話題」を持っていることが必要!
外国人の皆さんのお話を聞いていると、たいていは自分の興味があることなどをたくさん話します。こちらが興味や関心があるかないかはお構いなく、楽しそうに話すというケースが多いように思います。人間というのは不思議なもので、相手が楽しそうに話すと、こちらも興味や関心があるかないかは別にして、なぜか楽しい気分になって来るのです。したがって、一番重要なことは、「自分の興味があることなどをとにかく楽しそうにたくさん話す」ということです。
しかしながら、それは民族固有の特性のようなものもあるので、明日から「自分の興味があることなどをとにかく楽しそうにたくさん話しましょう!」と言われても、そんなことは簡単にはできないと思います。
この講座は、ビジネス英語に関して、誰でも一定のトレーニングを積めばできるようになることを紹介していますので、今回お薦めするのは、「面白そうな話題」をできるだけたくさん持っていることを目指す方法です。少しづつネタを増やして、引出しの数が多くなれば、「自分の興味があることなどをとにかく楽しそうにたくさん話す」といったことも実現できる日が来ると思います。「ネタ」というとお笑い芸人のようだと思われるかもしれませんが、そもそも、大阪の人々は、普段の会話からいわゆる「ネタ」を探しておられます。それがお話上手な方が多い理由なのかもしれません。
さて、なぜ「面白そうな話題」と繰り返し説明しているのかと言いますと、世の中には「面白くない話題」というものに溢れているからです。うっかり、そうした話題に触れると、大ひんしゅくを買うなんてことも起こりうるわけです。タブーは政治・宗教の話題、信条に関することなどですね。
特に、お酒を飲む席では特に何を話題にするのかは重要です。最近はコロナの影響で機会が大幅に減りましたが、仕事の後の飲み会に参加すると、仕事の話とか、上司に対する愚痴とかを大いに語りだす方々が多いので、私としては、さっさと家に帰りたくなるといった場面も多かったように思います。これにどっぷりと馴染んでいる方々には、誠に申し訳ないですが、「面白そうな話題」とはかけ離れているので、今回、私が紹介する方法については、難しく感じたり、つまらなく感じたりされるかもしれません。
ところで、NHKの「チコちゃんに叱られる」という番組で、「おやじギャグはなぜ止まらないのか?」というテーマをかなり前にやっていました。答えは「前頭葉が弱っているから」だそうです。要するに、前頭葉がしっかりしていると理性的な力が強く働き、頭の中で思いついたことがすぐに口から飛び出すことはかなり少なくなるそうですが、これが弱ってくると、頭の中で思いついたことが次々とすぐに口から飛び出すので、「おやじギャグが止まらない」ということになるそうです。そう言えば、世の中には「失言おじさん」と呼ばれる人がいらっしゃいますが、そうした理由があるならば、なにか責め立てるのも気の毒なような気もします。
「面白そうな話題」の一例
「シンデレラ」のお話は、皆さまもよく知っておられると思います。
継母の家に預けられたシンデレラが、継母にこき使われたり、継母の娘たちにばかにされたりしながら暮らしていると、ある日、魔法使いのお婆さんがかぼちゃの馬車などを仕立ててくれて、シンデレラは、お城の舞踏会に参加できることなりました。そこで素敵な皇子様に見初められますが、魔法が切れるタイムリミットギリギリで慌てて立ち去る際に片方のガラスの靴が残されました。そして、後日、それにフィットしたシンデレラが王子様と結ばれてめでたしというストーリーですね。
さて、現代の日本では「シンデレラ」として誰もが知っている有名なお話ですが、日本でも古い翻訳は「灰かぶり姫」と訳していたみたいです。中国語では何と呼ぶのか知っていますか? 「灰姑娘(huī gū niáng)」と言います。「灰」は、日本語と同じ意味で灰です。「姑娘」は、娘/女の子という意味です。わかりやすく言うと「灰まみれの娘」ということです。
たくさんの女の子が憧れるシンデレラのことを「灰かぶり姫」とか、「灰まみれの娘」とか呼ぶとは何事でしょうか!と叱られそうです。お叱りにならなくても、何とも酷い名前を付けるものだと感じられた方も多いと思います。では、なぜこのような名前にしたのでしょう?
シンデレラは、英語では、「Cinderella」と書きます。日本では、主人公の本名だと思っている方々が多い訳ですが、原作のお話では、「"Ella"という名前の美しい女の子がお父さんと暮らしていましたが、父親が亡くなったので、継母の家に引き取られた」となっており、本名は「Ella」さんなのです。
そうすると、「Cinderella」は「Cinder」+「Ella」となりますが、「Cinder」の意味はご存じですか?「灰」です。シンデレラという名前は、彼女が継母の家で暖炉などの掃除を灰まみれになってしているときに、「灰まみれのエラ(Cinderella)」といって、意地悪な継母が彼女に付けた「あだ名」だったのです。
つまり、日本の古い翻訳「灰かぶり姫」や中国語の「灰姑娘」は直訳だったのです。日本では、「シンデレラ」とカタカナ表記になり、広く知られるようになったので、本来の意味が伝わらなくなってしまったわけです。
実は、私自身も中国語の「灰姑娘」という名称を見て、「なぜ?このような名前?」と思うまで「Cinderella」は主人公の本名だと思っていました。
これは、私の友人の小さな娘さんが「私はシンデレラよ!」と言って喜んでおられる様子をみたときの話です。この話を知っていたので、密かにちょっと笑い出しそうになりました。なぜならば、「彼女が自分自身のことを灰まみれ姫と言っている」と思ったからです。
「絶対にだめですよ。シンデレラに憧れている小さな女の子を笑ったりしては!」と念のため申し上げます。
英語で話すネタを考えよう!
英語圏の人々は、「Cinderella」のことを「Cinder」+「Ella」だと知っていると思いますので、これを説明しても面白くはないと思いますが、日本では何でもカタカナ語に直して取り入れてしまう一例として紹介するとわかりやすいと思います。
最近、ITの世界では、なんでもカタカナ語を使っておられるので、「皆さま、外国語に精通しておられるなあ~」と感心していると、「実はあまり話せないので苦手です」と言われて驚く場面も多々あります。カタカナ語は、便利すぎる反面、外国語の習得には少し妨げになっているようにも思います。そもそも、カタカナ語を英語だと思ってそのまま言っても通じないので、発音の勉強の邪魔になるのであれば、漢字での和訳を覚えたほうがよいようにも思いますが、いずれにせよ、それは「十人十色」だと言うことですね。
最後に、参考までに上述の「面白そうな話題」の一例の説明文の英語版を紹介して終わります。
I am sure you are all familiar with the story of Cinderella.
Cinderella, who was entrusted to her stepmother's house, lived while being abused by her stepmother and being ridiculed by her stepmother's daughters. One day, the witch's grandmother made a pumpkin carriage and other things for her, so Cinderella was able to attend the ball at the castle. There she is met by a lovely prince, but one of her glass slippers is left behind as she hurriedly leaves just before the time limit expires. And at a later date, Cinderella, who fits her shoe size, is happily married to the prince.
By the way, in modern Japan, it is a famous story that everyone knows as "Cinderella", but it seems that even in Japan, the old translation was "Princess Ash-covered". Do you know what it is called in Chinese? She is called "huī gū niáng". "huī" means ash in the same meaning as in Japanese. "gū niáng" means daughter/girl. To put it simply, it means "Daughter Covered in Ash".
I'm afraid I'll be scolded for calling Cinderella, who many girls admire, "Princess Ash-covered" or "Daughter Covered in Ash".
Even if you don't scold me, I think there are many people who felt that it was a terrible name. So why did they translate the name like this?
In English, it is written as "Cinderella". In Japan, there are many people who think that it is the main character's real name. However, in the original story, a beautiful girl named "Ella" lived with her father, but when her father died, she was taken in by her stepmother's house. Her real name is Ella.
Then "Cinderella" becomes "Cinder" + "Ella", but do you know the meaning of "Cinder"? It is "ash". The name Cinderella was given to her by her spiteful stepmother, who called her "Cinderella (ash-covered Ella)" when she was cleaning the fireplace, etc. covered in ash in her stepmother's house . It was her "nickname".
In other words, the old Japanese translation "Princess Ash-covered" and the Chinese "Daughter Covered in Ash" were literal translations. In Japan, it was renamed "Cinderella" in katakana and became widely known, so the original meaning was lost.
Actually, I myself thought "Cinderella" was the main character's real name until I saw the Chinese name "huī gū niáng" and wondered "Why? Such a name?"
This is what happened when I saw my friend's little daughter happily saying, "I am Cinderella!" I knew this story, and I secretly almost burst out laughing. Because I thought, "She calls herself Ash-covered Princess."
"Absolutely not. Don't laugh at a little girl who admires Cinderella!"
皆さま、今回の「ビジネスの相手と親しくなるためには話題が必要!」というお話はいかがだったでしょうか。「"Cinderella"は灰かぶり姫?!」のお話は面白いでしょ?やはり、好奇心をいつも持っていることが大切ですね。豊富な話題でビジネス英語を駆使して印象に残る人物を目指してくださいね。