短編歴史物エッセイ

論文『女性天皇と女系天皇』

2025年3月24日

論文『女性天皇と女系天皇』
論文『女性天皇と女系天皇』

歴史上1度だけ皇位継承の危機があった。57歳まで地方豪族であった第26代継体天皇は第15代応神天皇の5世孫で、朝廷からの要請を受け天皇に即位されたが、人々に受け入れられなかった。皇室直系の血筋を持つ手白香皇后との間に生まれた皇子が成人し、第29代欽明天皇が誕生し、ようやく安定した。つまり、欽明天皇は「女系天皇」である。

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作家・歴史研究家の神部龍章による論文

 皆さま、こんにちは。作家・歴史研究家の神部龍章です。令和7年3月15日、神部龍章による論文『女性天皇と女系天皇』を発表させていただきました。「神部龍章の部屋」における短編歴史物エッセイ《連載・女性天皇と女系天皇(前編・後編)》と合わせてご一読いただければ幸いです。

論文『女性天皇と女系天皇』

論文の概要

 愛子内親王殿下(愛子さま)は、国民から深く尊敬・敬愛されている上皇様、天皇陛下の直系のお血筋であり、お人柄、ご品格、皇族としてのご自身のお立場に対するお考え、さらには常に国民に寄り添っておられるお姿など、すべてが素晴らしいお方である。憲法が定める「国民の象徴」としてのお立場を率先して実践されてきた上皇様や今上天皇のお考えをしっかりと受け継がれており、次の天皇に一番ふさわしいお方である。国民の大多数の皆さま方が心の中では女性天皇の実現を望んでおられるのではないかとも思料する。しかし、すでに皆様ご承知のとおり、愛子さまは皇位継承権をお持ちではない。ただし、政府見解では「憲法においては、憲法第二条に規定する世襲は、天皇の血統につながる者のみが皇位を継承するということと解され、男系、女系、両方がこの憲法においては含まれるわけではない。」と明確に答弁している。すなわち、女性天皇だけでなく、女系天皇であっても憲法上何ら問題はない。

 初代神武天皇から現在の今上天皇まで126代の天皇が即位されており、その中で女性天皇8名が実在した。770年、稱德天皇の崩御後、道教問題の教訓等により、女性天皇が一切擁立されない時代が続いたが、1629年、後水尾天皇が江戸幕府からの干渉を嫌い突如退位され、860年ぶりに女性天皇が復活した。江戸時代に女性天皇が一度復活した事実は見逃せない。現在こそが女性天皇の再復活のときだ。現在の皇室典範における皇位継承の規定は、史実に反する合理的な説明のできない規定だ。少なくとも「皇位は、皇統に属する男系の男女が、これを継承する。」と改め、女性天皇を認めることが必要不可欠だ。

 「女系天皇」とは、天皇の男女を問わず、その母親が天皇家の血筋の方で、かつ父親が他家の血筋の方の場合、その方が天皇に即位された場合の天皇のことを意味する。つまり、母親だけが天皇家の血筋の方をいう。初代神武天皇から現在の今上天皇まで126代の天皇が即位されたが、全員「男系天皇」(父親が天皇家の血筋の方)のため、歴史上女系天皇は一人もいない。皇位は、男系継承が固く守られ、一つの系統の血筋が受け継がれているとされており「万世一系」の考え方を基本とする。男系継承の極めて長い歴史上の重みは誰もが無視できない。

 歴史上1度だけ皇位継承の危機があった。57歳まで地方豪族として在野にいらした第26代継体天皇は、突然、朝廷からの要請を受け天皇に即位された。第15代応神天皇の5世孫とされるが、『日本書紀』の記述によれば、即位後20年間もの期間、他の場所で過ごされた。皇室直系の血筋を持つ手白香皇后との間に生まれた皇子が成人し、第29代欽明天皇が誕生し、天皇家直系のお血筋を引く方であるという理由で受け入れられた。その考え方に基づくと、欽明天皇は「女系天皇」であるということになる。大和の人々の心情として重要であったことは、男系男子云々ということではなく、天皇家直系のお血筋を引く方であるか否かという点であった。つまり、天皇家直系のお血筋を引いていることが優先されたのだ。

 将来的には男系男子に該当する方は悠仁親王さまお一人となる。したがって、今後の皇位継承を安定させるには、一定のスピード感をもって臨む必要がある。なぜならば、現在、皇室を守っておられる方々は限られている。かつては、一夫多妻制のもと、天皇家においても、現在と比べると男子の子宝に恵まれる機会は圧倒的に大きかったが、現代社会では一夫多妻制が認められることは絶対にありえない。代々必ず子宝に恵まれ、男子のみが皇位を脈々と継承するという考えは成り立たない。皇室の安定した将来が見通せなくなってしまう。現在、上述の皇位継承の危機があった時代よりもさらに厳しい状況にあることを直視すべきだ。継体天皇のような男系男子の遠縁のお血筋の方は、孝明天皇(明治天皇の父親)までさかのぼっても誰もいらっしゃらない。

 私は、歴史を探求する目的は、過去の経験や教訓を活かし、将来の指針とすることにあると考える。女系天皇も実際に存在されたのであれば、何の躊躇も必要ない。重要なことは「国民的議論」である。

【天皇系図(第120代から第126代まで)】

(注)筆者が各種資料を基に独自に作成、敬称略。

 

論文『女性天皇と女系天皇』

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